BLOG ブログ
機能強化加算の見直しを徹底解説
- 2026.03.23 | 代表ブログ
令和8年度診療報酬改定では、かかりつけ医機能を評価する「機能強化加算」の要件が大幅に見直されました。最大の変更点は、外来データ提出加算・在宅データ提出加算の届出(努力義務)と、事業継続計画(BCP)の策定が新たに要件化されたことです。
現在約13,500の医療機関が届出を行っている機能強化加算ですが、新要件を満たせなければ算定を継続できなくなります。本記事では、改定の全体像と調査データをもとに、クリニック・中小病院が今から対応すべきことを徹底解説します。
1. 機能強化加算とは(算定・届出の現状)
1-1. 加算の概要と趣旨
機能強化加算(80点・初診時)は、平成30年度診療報酬改定で新設された加算です。外来医療における適切な役割分担を図り、専門医療機関への受診の要否の判断等を含め、より的確で質の高い診療機能を評価する観点から、かかりつけ医機能に係る診療報酬を届け出ている医療機関において初診時に加算されます。
1-2. 算定回数と届出医療機関数の推移
届出医療機関数は令和3年以降横ばいで約13,500件に落ち着いていますが、算定回数は令和5年に月間約287万回と令和元年以前を超えており、1医療機関あたりの算定密度が高まっていることがわかります。
※中医協 総-1 7.10.17外来(その2)より引用
2. 令和8年度診療報酬改定で何が変わるのか
今回の改定では、機能強化加算について要件の見直し及び名称変更が行われます。具体的には、外来データ提出加算・在宅データ提出加算の届出を行っていることが望ましいとされ、新たに要件として位置づけられます。
他にも、業務継続計画を策定し、当該計画に従い必要な措置を講じること。また、定期的に業務継続計画の見直しを行い、必要に応じて業務継続計画の変更を行うことが求められます。
※令和8年度診療報酬改定について【医科全体版】令和8年3月6日版より引用
機能強化加算を届出している医療機関の約13,500件のうち、外来データ提出加算を届け出ている機関はまだごく一部であり、BCP策定済みの診療所も約30%に留まっています。新要件を満たせなければ機能強化加算(80点)の算定が継続できなくなるため、影響は甚大です。
※中医協 総-1 7.10.17外来(その2)より引用
3. 届出医療機関と未届出の差、データで見る「かかりつけ医機能」の実態
機能強化加算を届け出ている医療機関と届け出ていない医療機関では、実際のかかりつけ医機能にどのような差があるのでしょうか。令和6〜7年度の外来調査データを見ていきます。
3-1. かかりつけ医機能の実施状況
全項目で届出あり医療機関が10%以上、上回っています。特に「処方薬の把握」(70.6% vs 44.8%)や「地域活動への参画」(72.1% vs 46.2%)の差が顕著です。
※中医協 総-1 7.10.17外来(その2)より引用
3-2. 介護との連携
介護連携でも差は歴然です。特に「サービス担当者会議への参加」(55.9% vs 21.9%)、「高齢者施設の協力医療機関」(63.7% vs 28.8%)は2〜3倍の開きがあり、機能強化加算の届出が地域における役割の広さを反映していることがわかります。
※中医協 総-1 7.10.17外来(その2)より引用
3-3. ポリファーマシー対策
ポリファーマシー対策についても、機能強化加算・地域包括診療料の算定医療機関では取組みが進んでいます。
※中医協 総-1 7.10.17外来(その2)より引用
3-4. 検査体制の充実度
診療所における各検査項目の実施体制を見ると、いずれの項目についても機能強化加算の算定医療機関において、より早期に結果を出せる体制が確保されている傾向がありました。24時間自院で検査を実施し当日結果確認できる体制の割合が、機能強化加算の届出ありの医療機関で高く出ています。
※中医協 総-1 7.10.17外来(その2)より引用
3-5. 研修修了・研修医受入れの状況
かかりつけ医に関連した研修の修了状況では、「日本医師会のかかりつけ医機能研修」を修了又は一部受講した医師の在籍割合が最も高く43.5%でした。一方、総合診療専門医の在籍は11.9%、家庭医療専門研修プログラム修了者は5.3%にとどまっています。
※中医協 総-1 7.10.17外来(その2)より引用
また、医学生の実習受入れを行っている診療所は11.9%、専攻医の受入れはわずか4.2%という状況です。
※中医協 総-1 7.10.17外来(その2)より引用
4. BCP策定の現状と対応のポイント
今回の改定で最もハードルが高いと思われるのが、BCP(事業継続計画)の策定要件です。
約7割の診療所がBCPを策定していないのが現状です。具体的な災害対策の取組状況を見ると、「災害物資や備品の備蓄」(53.5%)が最も多く、次いで「職員の参集と安否確認の方法を定めている」(49.5%)、「定期的に避難訓練を実施」(44.8%)となっています。
一方、より体系的な取組みである「災害対策本部の設置要綱を定めている」(21.7%)や「災害時における近隣医療機関との連携手順」(21.4%)は2割程度にとどまり、組織的なBCPとしてはまだ未整備な医療機関が多い状況です。
BCPを策定する場合には、厚生労働省の「医療施設(災害拠点病院以外)における災害対応のためのBCP作成の手引き」等を参考に、まず最低限の計画を策定し、定期的に見直す運用を確立することが求められます。完璧を目指して着手が遅れるより、簡易版でも早期に策定を開始することが重要です。
※中医協 総-1 7.10.17外来(その2)より引用
5. クリニック経営への影響と対応策
5-1. 今すぐ着手すべき4つのアクション
1 BCPの策定
厚生労働省の手引きを参考に、まず簡易版のBCPを策定しましょう。災害物資の備蓄状況、職員の安否確認方法、近隣医療機関との連携手順の3点を最低限カバーし、定期的な見直しサイクルを設定することが重要です。
2 外来・在宅データ提出加算の届出検討
前回記事で解説したとおり、外来データ提出加算の届出には試行データの提出等のプロセスが必要です。今回の改定で機能強化加算の施設基準になった以上は、次回改定で努力義務から必須になる可能性もあるため中期的に着手すべき事項です。
3 処方薬の一元管理体制の強化
かかりつけ医機能の中核である「他院の処方薬も含めた薬の把握」は、届出ありでも70.6%に留まっています。お薬手帳の確認徹底、オンライン資格確認の活用、薬局からのトレーシングレポートの受領体制を整備しましょう。
4 介護・地域連携の見える化
サービス担当者会議への参加や高齢者施設の協力医療機関としての登録など、地域連携の実績を整理・可視化しましょう。これらの取組みは施設基準の充足にも、地域からの信頼獲得にも直結します。
6. 【まとめ】届出しているだけ、では済まない時代へ
令和8年度の機能強化加算の見直しは、かかりつけ医機能の「形式」から「質」への転換を象徴しています。データ提出の要件化は「質の見える化」への布石であり、BCP策定の義務化は「いざというときに地域を支えられるか」という実力を問うものです。
初診患者が多い診療所等では機能強化加算のインパクトも大きいため、新しい施設基準にしっかり対応しなければなりません。
「機能強化加算の新要件を満たすために、何を・いつまでに準備すればいいのか整理したい」
「BCP策定を支援してほしいが、ノウハウがない」
そのようなお悩みがございましたら、ぜひ当社にご相談ください。
※ 本記事は令和8年度診療報酬改定の公表資料に基づき作成しています。算定に際しては、最新の告示・通知等をご確認ください。
【執筆者情報】(株)医療経営支援事務所 代表取締役 竹森 健太
2016年、特定医療法人谷田会谷田病院に入職後、病院経営の実務を体系的に学びながら、事務部門の業務改善に取り組み、組織運営力の向上に寄与。
2020年より医療機関向けコンサルティング会社である㈱医療環境総研、NPO法人病院経営支援機構、医療経営支援事務所に所属し、50施設以上のクリニックや病院、介護事業所で経営・開業支援、事業承継、建替えを手掛ける。
複数のクリニックで事務長を代行し、院内業務の安定化やスムーズな経営改善が高く評価をいただいている。
また、医療機関や介護事業所の経営課題を解決するためのホームページ制作やシステム開発にも従事し、口コミ対策システムや医療介護マッチングつなぐ等、これまでに100事業所以上の支援実績を有する。


