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処方箋料・長期収載品・残薬対策の見直しを徹底解説

令和8年度診療報酬改定では、処方に関連する制度が見直されました。一般名処方加算の引き下げ長期収載品の選定療養における患者負担の倍増(1/4→1/2)リフィル処方箋の要件拡大、そして残薬対策の体系的な強化──いずれもクリニック・病院の外来運営と患者対応に直結する内容です。

本記事では、厚労省の公表資料と施設調査・患者調査のデータをもとに、各改定項目の概要と経営への影響を整理します。

 

1. 処方箋料・一般名処方加算の見直し

1-1. 一般名処方加算の点数引き下げ

後発医薬品の置き換えの進展等を踏まえ、一般名処方加算の評価が見直されます。

※令和8年度診療報酬改定について【医科全体版】令和8年3月6日版より引用

 

処方箋料のうち一般名処方加算の算定回数が占める割合は令和6年時点で66.0%に達しており、年々増加傾向にあります。一般名処方が「当たり前」になった現状を踏まえた引き下げですが、算定件数の多い診療所では年間で無視できない減収となります。

※個別事項(その12) 後発医薬品、バイオ後続品の使用体制②より引用

 

1-2. バイオ後続品の一般名処方が対象に

バイオ後続品の使用促進の観点から、バイオ後続品のあるバイオ医薬品の一般名処方を行う場合も評価の対象とされます。これにより、高額なバイオ医薬品分野でも後続品への切替えを促進する仕組みが整います。

1-3. 院内処方・院外処方の同一日投薬の明確化

同一の患者に対して同一診療日に一部の薬剤を院内処方し、他の薬剤を院外処方箋により投薬することは原則として認められていませんが、緊急やむを得ずこのような投薬を行った場合の取扱いが明確化されます。「F000調剤料の注3」として、やむを得ない事態であること等を明確にする規定が追加されます。

 

2. 後発医薬品の使用に対する体制加算の全体像

後発医薬品の使用促進に対する診療報酬上の加算は、医科(医療機関側)と調剤(薬局側)の両面で設定されています。一般名処方加算は、処方箋発行時に同一成分の他の医薬品のどれに置き換えても医学的に問題ないという判断、電子カルテシステム等の導入・運用コスト、患者への一般名処方の趣旨説明及び院内掲示等について、保険医療機関に対する評価として設けられています。

※個別事項(その12)後発医薬品、バイオ後続品の使用体制②より引用

 

3. 長期収載品の選定療養──患者負担が1/4から1/2へ

3-1. 制度変更の概要

後発医薬品の供給状況や患者負担の変化にも配慮しつつ、創薬イノベーションの推進や後発医薬品の更なる使用促進に向けて、長期収載品の選定療養における患者負担の見直しが行われます。

※令和8年度診療報酬改定について【医科全体版】令和8年3月6日版より引用

 

3-2. 選定療養の現状データ

令和6年11月時点のレセプトデータによると、選定療養の対象となったレセプト件数は約368万件(全体の4.9%)です。特別の料金の分布では、1,000円未満が90.0%、2,000円未満が98.3%を占めており、大半が少額であることがわかります。

※個別事項について(その7)長期収載品の選定療養➀より引用

 

3-3. 現場の課題──施設調査から

長期収載品の選定療養による影響や課題について、診療所・病院への調査結果は以下のとおりです。

「患者への説明や患者からの質問への対応に係る負担増になっている」、「患者への制度の周知が不十分」が最大の課題です。負担が1/2に倍増する今回の改定では、受付・窓口での患者説明の負担がさらに増大することが予想されます。

※個別事項について(その7)長期収載品の選定療養➀より引用

 

 

※個別事項について(その7)長期収載品の選定療養➀より引用

 

3-4. 患者の意識──切替え意向の調査データ

先発医薬品からジェネリック医薬品に切り替えようと思う「特別の料金」の程度について、患者調査の結果も注目に値します。

郵送調査(n=46)

「特別の料金がいくらであろうと先発医薬品を選択する」が28.3%で最多。一方「現在の2倍程度になる場合」に切り替えると答えた人は15.2%。

※個別事項について(その7)長期収載品の選定療養➀より引用

 

インターネット調査(n=100)

「現在の2倍程度になる場合」に切り替えると答えた人が32.0%で最多。負担倍増は一定の切替え促進効果が見込まれます。

今回の改定で実際に負担が約2倍になるため、インターネット調査の結果どおりであれば約3割の患者が後発品への切替えを検討する可能性があり、院内での説明・対応フローの整備が急務です。

※個別事項について(その7)長期収載品の選定療養➀より引用

 

4. 長期処方・リフィル処方箋の活用に係る要件拡大

長期処方及びリフィル処方箋による処方の活用を適切に推進する観点から、患者の状況等に合わせて医師の判断により長期処方やリフィル処方箋による処方に対応可能であることを患者に周知することについて、以下の管理料等の要件に追加されます。

特定疾患療養管理料、 皮膚科特定疾患指導管理料 、婦人科特定疾患治療管理料 、耳鼻咽喉科特定疾患指導管理料、 二次性骨折予防継続管理料、 小児科外来診療料

 

さらに、以下の2点も改定されます。

算定要件の見直し

患者の状態に応じ、28日以上の長期の投薬を行うこと又はリフィル処方箋を交付することについて、当該対応が可能であることを当該保険医療機関の見やすい場所に掲示するとともに、患者から求められた場合に、患者の状態を踏まえて適切に対応を行うことが要件化。

 

処方箋様式への追記

リフィル処方箋の患者認知度を向上する観点から、処方箋様式に「※リフィル処方箋とは、症状が安定している患者に発行し、最大3回まで反復利用できる処方箋」という説明を追記。

※令和8年度診療報酬改定について【医科全体版】令和8年3月6日版より引用

 

 

5. 残薬対策に関する主な改定項目

残薬対策は、処方時・調剤時・在宅訪問時の3段階で体系的に強化されます。

処方箋の指示欄に「残薬調整後の減量可」と記載するかどうかの判断が求められます。また、薬局からの情報提供(減量報告)を受け取る体制の整備も必要です。

※令和8年度診療報酬改定について【医科全体版】令和8年3月6日版より引用

 

6. クリニック・病院経営への影響と対応策

6-1. 今すぐ取り組むべき5つのアクション

1 選定療養の患者説明フローの再構築

負担が1/4→1/2に倍増することで、窓口での問合せ・トラブルが増加します。受付スタッフ向けのQ&Aシート、患者向け説明資料を事前に整備しましょう。

 

2 後発医薬品への切替え促進

選定療養の負担増に伴い、患者から後発品への切替え相談が増加します。切替え可能な薬剤のリストを事前に整理し、医師が迅速に判断できる体制を構築しましょう。

 

3 リフィル処方箋対応の院内掲示と体制整備

対応可能であることの院内掲示が管理料の算定要件に追加されます。掲示物の作成・設置に加え、対象患者の選定基準を院内で統一しておくことが重要です。

 

4 処方箋の残薬調整指示欄の運用ルール策定

処方箋様式に新設される指示欄について、どのような患者・薬剤で「減量可」とするかの基準を事前に定め、医師間で統一しておきましょう。

 

7. 【まとめ】 「薬の適正使用」が経営の基盤になる時代へ

令和8年度改定の処方・調剤関連の見直しは、後発品の使用促進、残薬の削減、リフィル処方箋の普及が推進される構造です。

特に長期収載品の選定療養は患者負担が倍増するため、窓口対応の混乱を最小化する準備が急務です。早めの体制整備で、改定直後のトラブルを回避しましょう。

 

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※ 本記事は令和8年度診療報酬改定の公表資料に基づき作成しています。算定に際しては、最新の告示・通知等をご確認ください。

 

【執筆者情報】(株)医療経営支援事務所 代表取締役 竹森 健太

2016年、特定医療法人谷田会谷田病院に入職後、病院経営の実務を体系的に学びながら、事務部門の業務改善に取り組み、組織運営力の向上に寄与。
2020年より医療機関向けコンサルティング会社である㈱医療環境総研、NPO法人病院経営支援機構、医療経営支援事務所に所属し、50施設以上のクリニックや病院、介護事業所で経営・開業支援、事業承継、建替えを手掛ける。
複数のクリニックで事務長を代行し、院内業務の安定化やスムーズな経営改善が高く評価をいただいている。
また、医療機関や介護事業所の経営課題を解決するためのホームページ制作やシステム開発にも従事し、口コミ対策システム医療介護マッチングつなぐ等、これまでに100事業所以上の支援実績を有する。