BLOG ブログ
令和8年度改定に向けた「賃上げ」議論について
- 2026.01.22 | 代表ブログ
皆さん、こんにちは。 今回は、医療経営における最大の関心事の一つ、「賃上げ」に関する最新の議論について解説します。
中医協(中央社会保険医療協議会)で議論されている令和8年度(2026年度)診療報酬改定に向けた方向性が見えてきました。政府は、物価上昇を超える賃上げを目指し、医療機関に対して非常に高い目標値を設定しています。
今回の議論資料から読み取れる、「病院」「クリニック」それぞれの経営インパクトと対策を整理しました。
1. 全体像:求められる賃上げ水準は高い
まず、令和8・9年度において国が支援しようとしているベースアップ(ベア)の目標水準を確認しましょう。
• 一般の医療関係職種:+3.2%
• 看護補助者・事務職員:+5.7%
特に注目すべきは、看護補助者と事務職員に対する「+5.7%」という数字です。他産業との人材獲得競争に勝つために、かなりの上乗せが設定されています。
これを実現するために、制度が大きく変わろうとしています。

2. 【病院】経営者への影響と対策
病院においては、「ベースアップ評価料」の仕組みが抜本的に見直される可能性があります。
① 「入院基本料」への統合・合算案
現在、別途届け出ている「看護職員処遇改善評価料」や「ベースアップ評価料」ですが、事務負担軽減と制度の恒久化を見据え、「入院基本料」等に包括(統合)するという議論が出ています。
具体的には、以下の3つの財源を合算して入院料に組み込む案です。
1. 令和6年度分のベースアップ評価料
2. 令和8年度改定での「賃上げ余力の回復・確保分」
3. 令和8・9年度の新規賃上げ分

⚠️ ここが重要:未届出病院への「減算」リスク
議論の中で非常に気になる記述があります。
「令和7年度にベースアップ評価料を届け出ていない医療機関については一定の控除を行うこととしてはどうか」
つまり、「面倒だから」と今のベースアップ評価料をスルーしている病院は、令和8年度以降、入院基本料が実質的に減算される(本来もらえるはずの点数から控除される)リスクがあります。これは、過去に賃上げに取り組まなかったとみなされるためです。
② 事務職等の対象拡大
これまで「入院基本料の増点」で対応されていた「事務職員」や「40歳未満の勤務医師」についても、今後は「ベースアップ評価料」と同様の仕組みに組み込まれ、「確実に賃金が上がったか」の実績検証が厳格化される方向です。

3. 【クリニック(診療所)】経営者への影響と対策
クリニックにおいては、現行の「外来・在宅ベースアップ評価料」の枠組みがベースとなりますが、評価に差がつく可能性があります。
① 「届出の有無」で評価が変わる?
クリニック(医科)における「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)」の届出率は約4割にとどまっています。 これを受け、次期改定では「令和6・7年度の算定状況(届出実績)」に応じて、評価に差を設ける案が浮上しています。
病院同様、クリニックにおいても「今のうちに届け出て実績を作っておくこと」が、次期改定での有利不利に直結する可能性があります。

② 評価料(Ⅱ)は維持の見込み
賃上げ必要額が(Ⅰ)だけで賄えない場合の「評価料(Ⅱ)」については、算定しているクリニックがわずか(数%程度)であることから、現行の体系(必要な医療機関のみが算定する仕組み)が維持される見通しです。
4. 事務負担は減るのか?(朗報)
現場から悲鳴が上がっている「事務負担」については、簡素化の方向で議論が進んでいます。
• 計画書の廃止案:「これからどう上げるか」という「賃金改善計画書」の提出を不要とし、事後の「実績報告」のみにする案が出ています。

• 法人一括計算:複数の病院やクリニック、訪問看護ステーションを持つ法人の場合、これまでは事業所ごとの計算が必要でしたが、法人全体で合算して計算し、按分する仕組みが検討されています。

今回の資料から読み取れるメッセージは明確です。 「賃上げに取り組まない医療機関は、将来の診療報酬(本体部分)で不利になる」ということです。
特に、現在ベースアップ評価料を届け出ていない経営者様は、令和8年度改定を見据え、今のうちに現行制度への届出を検討すべきです。「事務作業が大変だから」という理由で放置することは、中長期的な経営リスクになりつつあります。
事務職員の賃上げ目標が「5.7%」と明記された点も重く受け止める必要があります。これを機に、給与規定や昇給ルールの見直しに着手することをお勧めします。
※本記事および画像は、中医協 総ー5 8 . 1 . 1 4 賃上げについて(その2)に基づき作成しています。最終的な決定事項ではない点にご留意ください。

