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院長が経営から手を離せない3つの構造的理由
目次
- はじめに 「院長が経営判断に時間を使えない」は構造の問題
- 構造的理由①:意思決定が院長一点集中で滞留している
- 構造的理由②:数値が”見える化”されておらず判断材料がない
- 構造的理由③:採用・労務・取引業者対応が院長業務化している
- 診療所のコスト構造から見る”事務長機能”の経済合理性
- 事務長代行 vs 事務長雇用 vs ハイブリッド運用 ― 3つの選択肢
- 医療経営支援事務所が他のコンサルと違う3つの理由
- まとめ 院長の時間こそ最大の経営資源
- よくあるご質問(FAQ)
1. はじめに 「院長が経営判断に時間を使えない」は構造の問題
「スタッフの採用・マネジメントに困っている。患者が減っている」 これらは当社と契約する前の院長先生から、最も多くいただくお声です。問題は、院長先生の時間の使い方ではありません。多くの場合、これはクリニックという組織の”構造”の問題であり、その構造に手を入れない限り、外来枠を減らしても、勤務時間を伸ばしても、根本解決には至りません。
本記事では、なぜ院長先生は経営から手を離せないのか、その3つの構造的理由を整理し、それぞれを解消するための具体的な選択肢を提示します。
2. 構造的理由①:意思決定が院長一点集中で滞留している
最初の構造的理由は、意思決定の集中です。クリニックでは、医療機器の更新、消耗品の発注、スタッフのシフト調整、休暇申請、患者からのクレーム対応、求職者の面接、銀行・税理士・社労士とのやりとり、医薬品卸との交渉、ホームページの保守対応、施設基準の管理など、院長先生の判断を待って止まっている、という状態が珍しくありません。
これは「院長が決裁したがるから」起きているのではなく、「院長以外に決裁権限を持つ人がいない」という組織の設計上の問題です。スタッフが20〜30名規模のクリニックでも、職務権限規程・稟議規程・決裁基準が整備されていないケースが大半です。結果として、現場で発生する小さな判断のすべてが院長先生のところまで上がってきて、外来診療の合間に、または営業時間外の夜間に処理することになります。これでは、クリニックをよくするための経営判断に時間が回るはずがありません。
▼ 「院長が決めなくていい」を増やす権限委譲の例
- 消耗品発注:月額●万円までは事務長判断、それ以上は院長承認
- スタッフ採用:面接調整は事務長、面接は院長および事務長
- 取引業者交渉:見積取得・比較資料の作成は事務長、選定は院長
- クレーム対応:メインは事務長、必要時のみ院長
- シフト調整:スタッフおよび事務長で作成、院長は確認のみ
3. 構造的理由②:数値が”見える化”されておらず判断材料がない
2つ目の構造的理由は、経営の数値が見える化されていないことです。多くのクリニックでは、税理士事務所から月次試算表(P/L、B/S)が翌月後半に届く運用になっており、当月の売上推移、患者数の動向、新患・再診比率、診療単価、算定漏れの兆候、未収金の発生状況といった経営に直結する指標を、リアルタイムで院長先生が把握することは困難です。
電カルによっては経営分析機能を活用できる場合がありますが、「数字が見えないから判断できない」状態は、判断を後回しにし、後回しにされた判断は、いつしか院長先生の頭の中で滞留します。これが、診療と経営の兼務から抜け出せない第二の理由です。経営課題を解くには、まず「自院の現在地」が分かる仕組みを整える必要があります。具体的には、(1)日次の患者数・新患再診内訳・診療単価の自動集計、(2)月次のレセプト分析(算定項目別・診療科別)、(3)未収金の発生・回収・滞留の見える化、(4)スタッフ別の労働時間と人件費比率、(5)取引業者別の支払額推移 、 これらをダッシュボード化し、院長先生がいつでも確認できる状態にすることが第一歩です。
厚生労働省「医療経済実態調査」では、業界水準としての給与費比率・医薬品費比率・委託費比率などが整理されています。自院の数値を業界水準と比較できる体制があれば、「この支出は削るべきか維持すべきか」「この採用は今やるべきか半年後でよいか」の判断が、感覚ではなく数字でできるようになります。
4. 構造的理由③:採用・労務・取引業者対応が院長業務化している
3つ目は、採用・労務・取引業者対応が、いつの間にか院長業務として固定化していることです。求人広告原稿の確認、応募者の書類確認、面接日程の調整、面接当日の対応、内定者への条件提示、有給休暇管理、就業規則の改定、ハラスメント対応、社労士・税理士・銀行とのミーティング、医薬品卸の値段交渉、内装業者からの提案検討 。 これらすべてを、院長先生が独力でこなしているクリニックは少なくありません。
これらは、いずれも経営者が”判断”すべき領域ですが、院長先生が直接”実務”をする領域ではないものが多く含まれています。事務長機能とは、これらの実務を一手に引き受け、院長先生には「決裁が必要なポイント」と「経営判断が必要な戦略テーマ」だけを上げる役割です。事務長機能が空白だと、院長先生が実務まで降りて来ざるを得ず、結果として診療と経営の両立に苦しみ続けます。
5. 診療所のコスト構造から見る”事務長機能”の経済合理性
「事務長を雇えば人件費が増えるだけではないか」という疑問は当然です。ここでは、診療所の一般的なコスト構造から、事務長機能の経済合理性を整理します。
厚生労働省「医療経済実態調査」によれば、無床診療所(個人立)の給与費比率は医業収益の30%程度で推移するケースが多く見られます(具体値は最新調査年度をご確認ください)。例えば医業収益が月額1,500万円のクリニックの場合、給与費比率25%なら人件費は月額375万円、年額4,500万円規模です。ここに事務長を1名雇用するとなると、年収500万円〜800万円(社会保険等込み)の追加人件費が発生し、給与費比率は1〜2ポイント上昇します。
一方で、事務長機能が稼働することで、(1)算定漏れの解消による収益増(月額数十万円規模も珍しくない)、(2)取引業者の見直しによるコスト削減(年額100万円超の事例多数)、(3)未収金管理の徹底(医業収益の2%を超える未収金が常態化していたが回収率向上で改善した事例あり)、(4)採用コストの削減(媒体費の最適化、定着率向上による再採用コスト削減)、(5)院長の時間が新規施設基準の取得・自費サービスへの参入・地域連携強化による新患獲得等に振り向けられることによる収益機会の創出等、これらの効果が期待できます。当社が支援したクリニックの事例では、事務長機能の整備により、年間数百万円〜数千万円規模の利益改善につながったケースもあります。
▼ 事務長機能稼働による典型的な利益改善要素
- レセプト算定漏れの解消(特定疾患療養管理料、生活習慣病管理料等)
- 診療材料・医薬品卸・委託業者の見直し交渉
- 未収金の予防・回収フローの構築
- 採用媒体・採用コストの最適化
- 院長の時間創出による戦略テーマ(事業拡大等)への集中
6. 事務長代行 vs 事務長雇用 vs ハイブリッド運用
事務長機能を整える方法には、大きく3つの選択肢があります。それぞれメリット・デメリットがあり、クリニックの規模・成長フェーズ・院長先生の理想に応じて選択してください。
選択肢A:正社員として事務長を採用する
正社員として事務長を採用する方法です。メリットは、(1)組織内に事務長ノウハウが蓄積する、(2)スタッフとの密なコミュニケーションが取りやすい、(3)中長期的にはコストが抑えられる可能性。デメリットは、(1)経験豊富な事務長の採用自体が難度が高い、(2)採用後の教育に時間とコストがかかる、(3)院長先生と合わない場合の入れ替えが容易ではない、という点です。医業収益が一定規模を超え、院長先生が組織の核となる事務長を内部で育てたい場合には有力な選択肢です。
選択肢B:事務長代行サービスを利用する
外部の事務長代行サービスを月額契約で利用する方法です。メリットは、(1)正社員雇用に比べて人件費負担が軽い、(2)経験豊富な事務長機能を即日稼働できる、(3)診療報酬改定や法令対応など最新トピックに強い、(4)成果が出ない場合に契約見直しが容易、という点です。デメリットは、院内に事務長ノウハウが残りにくいこと。これは、後述するハイブリッド運用で解消可能です。当社の事務長代行サービスは、月単位で柔軟な契約形態をご提供しています。
選択肢C:ハイブリッド運用(代行+内部育成)
最初は事務長代行で経営機能を立ち上げ、並行して内部スタッフを将来の事務長候補として育成する方法です。当社が最もお勧めするのがこの方式で、(1)立ち上げ期は外部のプロが事務長機能を担い、(2)その間に内部の事務長候補者に事務長スキルをOJT・off-jtで移管し、(3)2〜3年後を目処に内部スタッフが事務長として独り立ちするという3年計画です。当社では、指導対象者のバックグラウンドや能力に合わせて、育成期間の短縮等を柔軟に対応しています。
7. (株)医療経営支援事務所が院長先生に評価されている理由
多くのコンサル会社は、課題分析と打ち手の提案を行いますが、実務まで伴走支援できるコンサルは多くありません。クリニックの経営はやることが多く、地域性や各クリニックのリソース、院長先生の経営方針などに合わせて最適な提案および実務体制を構築する必要があります。当社は、診療報酬を強みとしながらも、財務や集患、採用、マーケティング、DX化、マネジメントなどクリニックを経営するうえで必要な内容をクライアントの状況に合わせて全体最適となるような支援を行っているため、部分最適メインのコンサル会社により院長先生やスタッフが振り回された経験があるクリニックからも高く評価いただいております。
8. まとめ 院長の時間こそ最大の経営資源
クリニックの経営において最も希少な資源は「院長先生の時間」です。クリニックをスケールさせるための集患、採用、地域連携、自費拡大、新規事業、事業承継等、 いずれも院長先生の時間が必要ですが、これらの業務をいかに院長先生の貴重な資源を使わずに、同時にPDCAを回せるかが重要となります。
事務長機能の再設計は、単なる人件費の問題ではなく、経営のレバレッジを変える投資判断です。事務長代行・内部育成・ハイブリッド運用のいずれが自院に適するか、当社の無料相談で個別にお見立てします。
クリニックの利益は、”院長先生の時間”の使い方で決まります。事務長機能の不在は、院長先生から最も貴重な「診療と経営判断に向き合う時間」を奪います。医療経営支援事務所は、事務長機能を委託する事務長代行サービスと、貴院の職員を将来の事務長候補へ育てる事務長教育サービスの両方をご提供しています。事務長代行もしくは事務長教育なら、医療経営支援事務所(MMSO)にご相談ください。
★ 本記事をご覧の先生限定 ★
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お申込みは先着順で月1件まで。リモート支援のみとさせていただいております。
- 対象:全国のクリニック
- 申込方法:お問い合わせフォームに「事務長代行お試し希望」とご記入ください
10. よくあるご質問(FAQ)
Q1. 事務長代行は、どのような業務範囲を対応してくれますか?
A. 財務戦略・採用支援・取引業者交渉・診療報酬改定対応・経営会議運営など、税理士や社労士、行政書士等の専門資格を必要としない事務長業務全般が対象です。クリニックの状況に応じて支援範囲および優先順位に合わせて柔軟に対応いたします。
Q2. 事務長代行の費用はどのくらいですか?
A. 支援範囲・訪問頻度・規模によって変動します。月単位の契約で、正社員雇用と比較して人件費負担を抑えやすい設計です。詳しくは無料相談にて個別にお見積もりいたします。
Q3. 自院に事務長が既にいるが、教育やスキルアップを依頼することは可能ですか?
A. 可能です。当社の事務長教育プログラムは、現役事務長のスキルアップにも対応しております。院長先生のご家族が事務長をされているケースで、診療報酬や保健所などの監査対策、経営ノウハウなどの教育を依頼されるケースもあります。
Q4. 経営状況が厳しいのですが、相談しても大丈夫ですか?
A. もちろんです。「1年以内に赤字を改善したい」「利益を2倍以上にしたい」というご相談は当社の主要な支援テーマです。まずは無料相談にて現状をお聞かせください。
【執筆者情報】(株)医療経営支援事務所 代表取締役 竹森 健太
2016年、特定医療法人谷田会谷田病院に入職後、病院経営の実務を体系的に学びながら、事務部門の業務改善に取り組み、組織運営力の向上に寄与。
2020年より医療機関向けコンサルティング会社である㈱医療環境総研、NPO法人病院経営支援機構、医療経営支援事務所に所属し、50施設以上のクリニックや病院、介護事業所で経営・開業支援、事業承継、建替えを手掛ける。
複数のクリニックで事務長を代行し、院内業務の安定化やスムーズな経営改善が高く評価をいただいている。
また、医療機関や介護事業所の経営課題を解決するためのホームページ制作やシステム開発にも従事し、口コミ対策システムや医療介護マッチングつなぐ等、これまでに100事業所以上の支援実績を有する。

