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電子的診療情報連携体制整備加算の新設を徹底解説
- 2026.04.6 | 代表ブログ
令和8年度診療報酬改定では、医療DXの推進が「安心・安全で質の高い医療の推進」における重要施策として位置づけられ、これまでの「医療DX推進体制整備加算」と「医療情報取得加算」が統合・再編される形で、「電子的診療情報連携体制整備加算」が新設されました。本記事では、厚労省資料及び疑義解釈(事務連絡その1・その2)をもとに、クリニック・病院の経営者が押さえるべきポイントを徹底解説いたします。
1. なぜ「電子的診療情報連携体制整備加算」が新設されたのか
厚労省は医療DX関連施策の進捗状況を踏まえ、普及した関連サービスの活用を基本としつつ、さらなる関連サービスの活用による質の高い医療の提供を評価する観点から、従来の医療情報取得加算及び医療DX推進体制整備加算の評価を見直しました。
具体的には、マイナ保険証の利用率、電子処方箋の導入状況、電子カルテ情報共有サービスの普及度合いといった各種指標の進展に応じて、医療機関に求める要件を段階的に引き上げ、より包括的な体制整備を評価する加算へと再構成されています。
※令和8年度診療報酬改定についてより引用
2. 点数体系はどう変わったのか
【改定前】医療DX推進体制整備加算(初診時・月1回)
改定前は、医療DX推進体制整備加算1~6の6段階評価(初診時)に加え、医療情報取得加算(初診時・再診時)がそれぞれ独立し、算定できる形でした。
【改定後】電子的診療情報連携体制整備加算
改定後は、「電子的診療情報連携体制整備加算」として以下の体系に統合され、点数も変更となります。
- 初診時(月に1回)
- 電子的診療情報連携体制整備加算1/2/3 → 15点/9点/4点
- 再診時(月に1回)
- 電子的診療情報連携体制整備加算 → 2点
注目すべきは、現行の6段階評価から3段階(医科の場合)へ簡素化された一方、加算1の取得には非常に高い要件が求められる点です。現行制度で加算1(12点)を算定していた医療機関であっても、改定後の加算1(15点)を算定できるとは限りません。
3. 施設基準の全容 ― 加算1・2・3の要件
電子的診療情報連携体制整備加算の施設基準は10項目にわたり、加算1はその全てを、加算2は(1)~(7)の全て及び(8)(10)のいずれか、加算3は(1)~(7)のいずれかを満たす必要があります。
(5) マイナ保険証利用率の状況について
令和7年10月時点のレセプト件数ベース利用率は全国平均で47.26%まで上昇しています。令和6年1月の3.99%からわずか2年弱で約12倍に増加した計算であり、普及が進んでいます。ただし、医療機関ごとのばらつきは依然として大きく、30%を下回る施設も少なくありません。マイナ保険証の利用促進は、加算取得のための最低条件として、まず確認すべきポイントです。
※令和8年度診療報酬改定についてより引用
(8) 電子処方箋の導入状況について
電子処方箋の導入状況を見ると、令和7年10月時点で薬局の導入率は86.5%と高水準である一方、病院は17.3%、医科診療所は23.3%、歯科診療所は7.0%にとどまっています。調剤結果登録割合(月間)は82.8%と高い水準ですが、医療機関側の導入が追いついていない現状が浮き彫りになっています。
※個別事項について(その18)医療DXより引用
4. 疑義解釈(事務連絡)で明らかになった重要ポイント
【事務連絡その1(令和8年3月23日)】
問3 では、令和8年5月31日時点で現に医療DX推進体制整備加算及び診療録管理体制加算の施設基準を届け出ている保険医療機関が、同年6月1日以降に電子的診療情報連携体制整備加算を算定する場合には、改めて届出を行う必要があることが明確化されました。
つまり、現行の加算を算定中の医療機関であっても、自動的に新加算へ移行されるわけではないということです。令和8年6月1日の改定施行日に向けて、改めて施設基準の確認と届出準備を進める必要があります。
【事務連絡その2(令和8年4月1日)】
問1 では、加算1の施設基準における「電子カルテ情報共有サービスとの接続インターフェースを有していること」について、地域の医療情報ネットワークに係る要件((9)の(イ)及び(ウ))を満たす場合には、この要件を満たすものとみなすとの解釈が示されました。これにより、電子カルテ情報共有サービスへの直接接続が未整備であっても、地域ネットワーク要件を満たしていれば加算1の算定が可能となる場合があります。
問27 では、施設基準における「非常時に備えた医療情報システム」について、電子カルテシステム、オーダーリングシステム、レセプト電算処理システムを指すことが明確化されました。
5. 電子カルテ情報共有サービスの動向と今後のスケジュール
電子カルテ情報共有サービスは、全国の医療機関等において電子カルテ情報を共有・閲覧することができるようにするサービスです。支払基金が運営する「電子カルテ情報共有サービス」を通じて、診療情報提供書・退院時サマリー・健診結果報告書の3文書と、検査・感染症・処方・傷病名・薬剤アレルギー・その他アレルギーの6情報が共有されます。
※個別事項について(その18)医療DXより引用
今後の対応方針
- 現在、全国10地域でモデル事業を実施中
- モデル事業で明らかになった課題への対応として、電子カルテ情報共有サービスと電子カルテ両者のシステム改修・検証を実施
- 来年の冬頃をメドに全国で利用可能な状態にすること(運用開始)を目指す
- 令和8年度夏に具体的な普及計画を策定予定
※個別事項について(その18)医療DXより引用
6. 医療DX全体の普及状況を俯瞰する
令和8年度改定における医療DX関連の評価を理解するためには、各要素の普及状況を整理することが重要です。電子カルテ・電子カルテ情報共有サービスにおいては、今後普及フェーズとなり、対応が求められることになりますので、アンテナを張っておきましょう。
※個別事項について(その18)医療DXより引用
7. クリニック・病院経営への実務的影響と対応策
今すぐ確認すべき4つのポイント
① マイナ保険証利用率の現状把握
自院のマイナ保険証利用率が30%を超えているかどうか、まずは確認してください。30%に満たない場合、受付での声かけやポスター掲示、マイナ保険証利用を促す動線設計など、具体的な促進策が必要です。
② 電子処方箋の導入検討
加算1・2の算定には電子処方箋の発行体制が必須です。特に診療所および病院では導入率が低い状況が続いており、今後のベンダー選定やシステム改修のスケジュールを早期に検討すべきです。
③ サイバーセキュリティ対策の整備
バックアップ体制の確保は加算算定の要件であると同時に、BCP(事業継続計画)の観点からも必須の取り組みです。特に「ネットワークから切り離したオフライン保管」の要件について、現状の体制で対応できているか確認が必要です。
④届出スケジュールに注意
前述の通り、事務連絡その1において、現行の医療DX推進体制整備加算を算定中の医療機関であっても、改めて届出が必要であることが明確化されています。令和8年6月1日の施行に向けて、施設基準の充足確認と届出書類の準備を計画的に進めてください。
8. まとめ
電子的診療情報連携体制整備加算の新設は、単なる加算の名称変更ではありません。医療DXの各要素(マイナ保険証、電子処方箋、電子カルテ情報共有サービス、サイバーセキュリティ)を包括的に評価する仕組みへの転換であり、医療機関に対して段階的かつ着実なDX推進を求めるものです。
特に、加算1の算定にはハードルの高い要件が設定されており、地域の医療情報ネットワークへの参加やサイバーセキュリティ対策の整備など、自院単独では対応が難しい課題も含まれています。
当事務所では、診療報酬改定への対応はもちろん、施設基準の届出フォロー、医療DX推進体制の構築支援など、クリニック・病院の経営を包括的にサポートしております。お気軽にお問い合わせください。
※ 本記事は令和8年度診療報酬改定の公表資料に基づき作成しています。算定に際しては、最新の告示・通知等をご確認ください。
【執筆者情報】(株)医療経営支援事務所 代表取締役 竹森 健太
2016年、特定医療法人谷田会谷田病院に入職後、病院経営の実務を体系的に学びながら、事務部門の業務改善に取り組み、組織運営力の向上に寄与。
2020年より医療機関向けコンサルティング会社である㈱医療環境総研、NPO法人病院経営支援機構、医療経営支援事務所に所属し、50施設以上のクリニックや病院、介護事業所で経営・開業支援、事業承継、建替えを手掛ける。
複数のクリニックで事務長を代行し、院内業務の安定化やスムーズな経営改善が高く評価をいただいている。
また、医療機関や介護事業所の経営課題を解決するためのホームページ制作やシステム開発にも従事し、口コミ対策システムや医療介護マッチングつなぐ等、これまでに100事業所以上の支援実績を有する。

