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質の高い精神医療の評価を徹底解説
- 2026.04.8 | 代表ブログ
令和8年度(2026年度)診療報酬改定では、「質の高い精神医療の評価」が大きな柱の一つとして位置付けられました。精神疾患を有する外来患者は令和5年時点で約576.4万人と過去最高水準まで増加し、20歳未満の精神疾患総患者数も約65.5万人と、平成26年から2倍以上に膨らんでいます。人口・入院患者が減少する一方で、外来・地域における精神医療ニーズは拡大し続けており、国は「質の高い精神医療・地域包括ケアシステムの確保」と「多職種による支援の強化」を明確に打ち出しています。
本記事では、厚労省資料をもとに、①通院・在宅精神療法の見直し、②心理支援加算の見直し、③児童思春期支援指導加算の見直しを中心に、精神科クリニック・精神科病院の経営にどのような影響を与えるのかを整理します。ぜひ最後までご覧ください。
1. 精神医療をめぐる全体像
今回の改定では、精神医療全体について次の4つの視点で評価体系が整理されました。
- 質の高い外来医療(通院・在宅精神療法 等)
- 患者の状態に応じた入院医療体制の確保(精神科救急医療体制加算 等)
- 退院支援の充実(特定入院料 等)
- 人口・入院患者が減少する中での、質の高い精神医療・地域包括ケアシステムの確保(精神科地域密着多機能体制加算 等)
※令和8年度診療報酬改定の概要【医科全体版】 より引用
2. 通院・在宅精神療法の見直し
今回の改定で最も算定回数への影響が大きいのが、通院・在宅精神療法の見直しです。
現行の評価体系
現行では、精神保健指定医が初診日に通院・在宅精神療法を実施した場合、
- 60分以上:600点
- イ及びロ以外の場合:550点
という2区分のみで、「30分以上60分未満」という区分が存在しませんでした。
改定後のポイント
令和8年度改定では、初診における評価が以下のように再編されます。
- 60分以上の場合:650点(現行600点から+50点)
- 30分以上60分未満の場合:550点(新設)
- それ以外の場合は従来どおりの評価
この見直しにより、初診で30分以上しっかり時間をかけて精神療法を行う医療機関が正しく評価される構造となりました。
※令和8年度診療報酬改定の概要【医科全体版】 より引用
NDBデータから見る通院・在宅精神療法算定時における初診再診の割合
厚労省が示したNDBデータ(令和7年5月診療分)によれば、30分以上の通院・在宅精神療法を算定した場合、精神保健指定医による算定が約28万回に及び、そのうち一定割合が初診患者に対する精神療法でした。精神保健指定医による初診で30分以上の診療の実態があるため、質の高い外来医療の提供に向けて、今回は評価されています。
※個別事項について(その13)精神医療② より引用
非精神保健指定医による通院・在宅精神療法も見直し
もう一つ押さえておきたいのが、非精神保健指定医による通院・在宅精神療法の評価見直しです。改定後は、以下のすべてを満たす医師が行った場合に算定可能となります。非精神保健指定医であっても、一定の要件を満たせば精神療法の算定が可能となりますが、今回の改定で厳しく見直されています。
※令和8年度診療報酬改定の概要【医科全体版】 より引用
3. 心理支援加算の見直し
公認心理師の活躍の場として注目されてきた心理支援加算も今回の改定で見直されました。
現行(心理支援加算:250点/月2回)
- 対象患者:心的外傷に起因する症状を有する患者
- 実施者:精神科を担当する医師の指示を受けた公認心理師
- 内容:対面による心理支援を30分以上実施
- 期間:初回算定日の属する月から起算して2年を限度
改定後(心理支援加算:280点/月2回)
点数30点アップに加えて、対象疾患に神経症性障害、ストレス関連障害、身体表現性障害の追加、実施者および施設基準が見直されました。
※令和8年度診療報酬改定の概要【医科全体版】 より引用
対象拡大の背景
国立精神・神経医療研究センターの研究では、通院中の神経症性障害、ストレス関連障害、身体表現性障害等の患者に対して、通院精神療法に加えて公認心理師による心理支援を導入した場合、患者の状態のさらなる改善が認められました。こうしたエビデンスを踏まえて、今回の改定で心理支援加算の対象患者に「神経症性障害・ストレス関連障害・身体表現性障害」が追加されています。
※個別事項について(その13)精神医療② より引用
算定回数は月1.6万回ペースまで拡大中
NDBデータによれば、心理支援加算の算定回数はR6.6の10,548回からR7.5の16,250回まで、約1年で1.5倍に増加しています。
※個別事項について(その13)精神医療② より引用
4. 児童思春期支援指導加算の見直し
20歳未満の精神疾患総患者数は、平成14年の13.9万人から令和5年には65.5万人と約4.7倍に増加。特にR2年以降は、その他の精神および行動の障害、神経症性障害、ストレス関連障害、身体表現性障害が急増しています。
児童思春期の疾病構造の変化、患者数の増加などを踏まえて、児童思春期支援指導加算の要件および評価が見直されました。
加算2の施設基準としては、「当該保険医療機関が過去3カ月間に初診を実施した20歳未満の患者数が月平均4人以上であること」が求められます。
全国の届出状況
児童思春期支援指導加算の届出医療機関は都道府県ごとに大きく偏在しており、東京都(約39施設)、大阪府(約26施設)、愛知県(約27施設)に集中する一方で、3施設以下の都道府県も一定数あるという実態が明らかになりました。
届出を行わない理由として、「患者が少なく、過去6か月間に初診を実施した20歳未満の患者数が月平均8人未満である」等の理由で回答されています。
また、発達障害を診療する医療機関における初診待機期間は令和元年において平均2.6か月、最大54か月というデータも示されており、児童思春期の受入体制確保は課題になっています。
7. まとめ
令和8年度診療報酬改定では、精神保健指定医および多職種による支援の強化による質の高い外来医療を実現するための改定となりました。
これらの改定を正しく院内に落とし込み、機会損失が発生しないよう気を付けましょう。
当事務所では、診療報酬改定への対応はもちろん、施設基準の届出フォローなど、クリニック・病院の経営を包括的にサポートしております。お気軽にお問い合わせください。
※ 本記事は令和8年度診療報酬改定の公表資料に基づき作成しています。算定に際しては、最新の告示・通知等をご確認ください。
【執筆者情報】(株)医療経営支援事務所 代表取締役 竹森 健太
2016年、特定医療法人谷田会谷田病院に入職後、病院経営の実務を体系的に学びながら、事務部門の業務改善に取り組み、組織運営力の向上に寄与。
2020年より医療機関向けコンサルティング会社である㈱医療環境総研、NPO法人病院経営支援機構、医療経営支援事務所に所属し、50施設以上のクリニックや病院、介護事業所で経営・開業支援、事業承継、建替えを手掛ける。
複数のクリニックで事務長を代行し、院内業務の安定化やスムーズな経営改善が高く評価をいただいている。
また、医療機関や介護事業所の経営課題を解決するためのホームページ制作やシステム開発にも従事し、口コミ対策システムや医療介護マッチングつなぐ等、これまでに100事業所以上の支援実績を有する。


