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特定機能病院等紹介患者受入加算(60点)について
- 2026.03.23 | 代表ブログ
令和8年度(2026年度)診療報酬改定において、外来医療の機能分化をさらに推進する施策として「特定機能病院等紹介患者受入加算」が新設されました。この加算は、特定機能病院等からの紹介患者を受け入れた診療所・中小病院に対し、初診時に60点を算定できる新たな評価です。
本記事では、この加算の概要と算定要件を整理するとともに、クリニック・病院経営者が押さえるべき戦略的なポイントについて解説します。
1. 外来医療の機能分化が加速する背景
1-1. 国が描く外来医療の将来像
社会保障制度改革国民会議の報告書(平成25年)以降、国は一貫して「外来医療の機能分化」を推進してきました。その基本方針は、大病院の外来は紹介患者を中心とし、一般的な外来受診は「かかりつけ医」に相談することを基本とするシステムの構築です。
平成30年度改定では紹介状なしの大病院受診時の定額負担の対象医療機関が拡大され、地域包括診療料等の施設基準の見直しやかかりつけ医機能の評価充実が図られました。そして令和8年度改定では、大病院からの逆紹介をさらに促進するため、受け入れ側の医療機関を評価する仕組みが導入されたのです。
※中医協 総ー1 7.10.17 外来(その2)より引用
1-2. 逆紹介を阻む現場の課題
令和7年度の入院・外来医療等における実態調査(施設調査票)によれば、再診患者の逆紹介を行う上での課題として、以下の項目が上位を占めました。「逆紹介先の情報が少なく選定が困難」は地域医療支援病院等で23.2%。受け入れ側の「見える化」が経営上の差別化ポイントになることを示唆しています。
※中医協 総ー1 7.10.17 外来(その2)より引用
2. 特定機能病院等紹介患者受入加算の概要
2-1. 算定点数と基本要件
今回新設された特定機能病院等紹介患者受入加算は、特定機能病院、地域医療支援病院、400床以上の病院、紹介受診重点医療機関からの逆紹介を受けて初診を行ったクリニック・200床未満の病院が、所定点数に60点を加算できるという仕組みです。紹介元と連携し、患者を確実に受け入れる体制が評価されることになりました。

3. なぜ大規模病院は逆紹介を加速させるのか
3-1. 紹介割合・逆紹介割合と初診料・外来診療料の減算
大規模病院には、紹介割合・逆紹介割合が一定基準を下回ると、初診料(216点→188点)および外来診療料(56点)として減算される仕組みがあります。

※中医協 総ー1 7.10.17 外来(その2)より引用
この減算を回避するため、大規模病院は紹介・逆紹介の推進に一層力を入れざるを得ない状況です。特に再診患者の外来診療料の算定回数が多い病院ほど、逆紹介の促進が経営的に急務となっています。
3-2. 多数回再診患者の実態
NDBデータ(令和4年4月~令和6年3月診療分)によれば、特定機能病院等の再診患者について、直近1年間に20回以上外来診療料を算定した患者の割合は約5%、10回以上の患者は約24%に上ります。
※中医協 総ー1 7.10.17 外来(その2)より引用
これら多数回再診患者の主な疾患は以下のとおりです。
いずれも慢性疾患であり、かかりつけ医での継続的な管理に適した疾患です。今後、大規模病院からこれらの疾患を中心とした逆紹介で患者を獲得し、地域包括診療料の算定に繋げることが理想の流れになります。
※中医協 総ー1 7.10.17 外来(その2)より引用
4. クリニック・中小病院の経営戦略への影響
4-1. 逆紹介患者の受け入れは新規患者獲得チャネル
特定機能病院等紹介患者受入加算の新設は、クリニック・中小病院にとって単なる加算の算定機会にとどまりません。大規模病院から紹介される患者は慢性疾患を抱えるケースが多く、一度受け入れれば長期的な再診患者として定着する可能性が高いのです。
つまり、この加算は「初診60点の上乗せ」という短期的なメリットに加えて、安定した患者基盤の拡大につながる中長期的な経営効果を持っています。
4-2. 具体的に取り組むべき5つのアクション
1 連携先の大規模病院との関係強化
特定機能病院や地域医療支援病院の地域連携室との定期的なコミュニケーションを図り、逆紹介先として認知されることが第一歩です。
2 受入体制の整備と対応疾患の明確化
糖尿病、高血圧症、関節リウマチなど、逆紹介が多い疾患への対応力を整理し、連携先に情報提供することが重要です。
3 患者への安心感の提供
逆紹介最大の課題は「患者の不安」です。紹介元と連携した診療計画の共有や、必要時の再紹介ルートの説明など、患者が安心して移行できる仕組みを整備しましょう。
4 算定漏れの防止
紹介状の管理体制を見直し、要件を満たす初診について確実に加算を算定できるよう、受付・医事課のオペレーションを整備することが不可欠です。
5. まとめ 「逆紹介を受ける力」が経営を左右する時代へ
令和8年度診療報酬改定における特定機能病院等紹介患者受入加算の新設は、外来医療の機能分化が新たなフェーズに入ったことを意味しています。大規模病院は減算回避のために逆紹介を加速させ、その受け皿となるクリニック・中小病院の役割はますます重要になります。
この流れを「機会」として捉え、連携体制の構築・受入体制の整備・算定オペレーションの確立に取り組むことが、今後の外来経営の成否を分けるポイントとなるでしょう。
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※ 本記事は令和8年度診療報酬改定の公表資料に基づき作成しています。算定に際しては、最新の告示・通知等をご確認ください。
【執筆者情報】(株)医療経営支援事務所 代表取締役 竹森 健太
2016年、特定医療法人谷田会谷田病院に入職後、病院経営の実務を体系的に学びながら、事務部門の業務改善に取り組み、組織運営力の向上に寄与。
2020年より医療機関向けコンサルティング会社である㈱医療環境総研、NPO法人病院経営支援機構、医療経営支援事務所に所属し、50施設以上のクリニックや病院、介護事業所で経営・開業支援、事業承継、建替えを手掛ける。
複数のクリニックで事務長を代行し、院内業務の安定化やスムーズな経営改善が高く評価をいただいている。
また、医療機関や介護事業所の経営課題を解決するためのホームページ制作やシステム開発にも従事し、口コミ対策システムや医療介護マッチングつなぐ等、これまでに100事業所以上の支援実績を有する。

